2021.8.16

第 9 回

フェリス女学院 VS
洗足学園

“北のフェリス” 洗足に
追い上げられる名門フェリス
神奈川女子トップ校の
異なる個性

森上教育研究所 所長 森上展安氏

大学合格実績を急成長させた洗足

 この女子校2校の校名が並記されるようになったのはいつ頃からか、手許にある四谷大塚の偏差値推移をみると、今の大学2年生が入学した2014年頃は、フェリス67、洗足62で、5ポイントの開きがありました。5ポイントはワンランク分という意味合いがあるのでまさにランクが違っていました。これが65で並んでくるのが2018年から。2017年春の実績で東大が9名出て、校長が今の宮阪校長に変わった翌年です。フェリスは2017年まで66でしたが、2018年に65になり、ここで難度が同じになりました。
 今春、洗足は念願の東大二桁10名を出し、8名のフェリスを上回りました。率ではともかく、絶対数ではフェリス並みになりました(フェリスは東大二桁を近年では2016年、2018年に出しています)。
 今年の大学合格実績を比較すると、フェリスVS洗足は次のようになります。国公立大はフェリス69 VS 洗足93、医学部はフェリス26 VS 洗足38、国立難関大はフェリス24 VS 洗足34、早慶上智大はフェリス162 VS 洗足292(AERAムック『中高一貫校選び2022』より)。卒業生の数がフェリス182 VS 洗足240なので、まさに並立しているのです。

いまや「北のフェリス」となった洗足

 フェリスと洗足の違いは、定員が3対4だということ、その1の差として帰国子女がちょうど1/4程度のシェアを占めていることです。グローバル対応という点で、例えば模擬国連などで男子校の聖光と交流するなど、女子校だけではない活動を広げていることが洗足の特色として挙げられます。
 約20年前に当時の洗足の櫻井校長が「洗足を北のフェリスにする」と宣言した際は、半ば冗談とも受け取られていましたが、このように振り返ると同校の「展望」と「実行力」に改めて驚かされます。
 洗足がいみじくも「北のフェリス」と言ったように、洗足が横浜の北に立地して、田園都市線と南武線の交差する交通の要所にあったことが発展の礎でしょう。
 フェリスは言うまでもなく横浜市の中核である山手にあって、フェリス坂を上がった先にあるミッション校の最初の学校で、長らく神奈川女子名門のトップであり続けています。
 女子学院とよく並び称されるようにまことに自由な校風で、横浜女子御三家の中でも自由闊達さは格別です。フェリス坂の道いっぱいに生徒が広がる通学風景は、「整然」とは程遠い学校文化を表しているのだと解説する人もいます。

フェリス―洗足の併願は神奈川県では定番

 桜蔭-豊島岡女子という併願の定番もあるように、神奈川の受験生では当然、フェリス-洗足という併願も少なくありません。しかもフェリス1日が2.0倍、洗足2日が3.4倍~3.8倍となるのが近年の入試状況で、洗足の倍率は全入試回とも高倍率で推移しています。この点も桜蔭-豊島岡女子の入試状況とますます似ています。ただ豊島岡女子の2日は2.5倍と2倍台ですが。
 伝統的なキリスト教教育のフェリスと、アメリカの大学への進学など帰国子女を1つの軸としている洗足。校風に個性があり、いずれかを選択できるトップレベルの女子校がある、という点は受験生にとって何よりのことだと思います。