2021.6.14

第 7 回

駒東 VS
海城

近隣県からの志願者も多い
都内の人気進学校
外からでは見えにくい
それぞれの「校風」

森上教育研究所 所長 森上展安氏

難関校として近隣県からも人気の2校

 両校のHPを比較すると駒東には失礼ながら圧倒的に海城のビジュアルが優れています。海城のサイトはアクセスしたときの消費者(?)目線をよく理解した構成になっていることにも感心させられます。
 海軍予備校を前身とする海城は130年と歴史は古く、駒東は戦後に出発した比較的新しい学校です。しかし、HP画像からは理科棟を新築している海城のほうが新しく見えるから不思議です。
 男子の進学校は灘や東京の「御三家」に代表されるように戦前からの旧制中学(灘、開成、麻布)や旧制高校(武蔵)からのところが主流です。戦後に参入した駒東、栄光、聖光が頭角を現わし、海城も2011年に高校募集を停止して完全中高一貫校の仲間入りをしてから難関進学の一角に位置しています。
 結局戦後に首都圏への人口集中で東京から神奈川など隣県に住宅域が拡大しましたので、駒東を含めて栄光、聖光そして御三家で言えば麻布が神奈川からの通学生が過半を占める状況になりました。
 海城は2001年の湘南新宿ラインの開通で、神奈川から通学しやすくなりました。逆もまた真なりで、特に聖光や浅野が東京からも通いやすくなりました。

医歯薬に強い海城、東大に強い駒東

 駒東は難関進学校の常で、8割がた理系に進学、文系は3割強。海城は社会科が伝統的に指導力があり、出口も4割がたが文系です。両者に共通することは難関進学校の常として医歯薬系進学が一定数を占めること。
 特に駒東は母体が東邦大学で、同大は医学部から出発したくらいですから、学校で事故があると隣接している東邦大大橋病院から救急車が駆けつけてくれる安心感は大きいように思います。
 一方、海城は近年とみに医学部進学熱が高く、医歯薬進学率では駒東より30%対16%で海城が倍近く多い状況です。
 男子難関進学校のメルクマールである東大合格者で言えば20年、21年の実績で駒東は往時の実績を取り戻し、現浪で60名台を出す一方、海城も安定的に40名~50名を維持しています。やや母集団が海城の方が大きく(100名ほど多い)。東大合格率という点では駒東に軍配があがります。

帰国子女を積極的に取り込む海城

 両者の入口の違いということで鮮明なことは、帰国子女に門戸を特別に開いているか否か、ということです。もっともこれは駒東に限らず御三家と駒東はあえて帰国子女入試を行っていませんから、伝統校の通常のあり方ですが、海城は中高一貫校化の際に高校入試を帰国子女だけ残すとともに、それ以前からも定期的に帰国子女の編入を認めるなど積極的に帰国生にアピールしています。

母親の存在感が強い「ママ東」

 校風の違いで言えば、駒東はママ東と揶揄されるくらい母親に人気があり、実際に母親の様々な交流が活発です。一方、海城は別に海軍の武張った校風があるわけではありませんが、特にそこまで保護者、特に母親の存在感がある、という印象はありません。

入試問題にクセのある駒東、
バランスのよい海城

 入試問題で海城は中堅校から難関校の一角を占めるまでになったこともあり、バランスのよい出題です。一方、駒東は出発から日比谷の初代校長を招聘して創立されただけあって、御三家と同じく東大入試を意識した出題傾向で、とりわけ算数の図形問題の出題が半分近くを占めることもあるくらい関東の難関校では珍しく図形を重視しています。これは灘など関西の学校では当たり前の出題傾向なのですが、関東では特異で、それだけに御三家のような3倍にもなる人気は出ませんが、常に固定ファンはいる、ということになります。
 やはり注意したいのは、図形は小5、小6の2年間ではセンスが養えないということです。小学校低学年からそこは意識的に取り組まなくてはいけませんから、その意味でもママの力が大きい学校だと言えます。海城は紳士の育成を唱え、パパにうけている印象です。