2020.8.17

第 1 回

開 成 VS 麻 布

「開成らしさ」「麻布らしさ」の正体に迫る
~コロナ禍への対応で鮮明になった両校の違いとは~

森上教育研究所 所長 森上展安氏

コロナ禍で鮮明になった
文化の違い

最近、両校の違いについて世間の耳目を引いたことがありました。
それはこのコロナ禍への対応として、開成が3月にICT委員会を立ち上げて全学年の全クラスでオンライン授業を実現したのに対して、麻布は特段の対応はせず、先生方から課題が出され、それに対してリポート等を提出する、といった淡々とした対応だった、というもの。
「文藝春秋」2020年6月号に平秀明麻布校長のインタビュー記事が出ていましたが、そこが麻布らしいところと校長も自認していました。このように何かコトが起こるとその学校の文化が鮮明に立ち現れます。
世間の耳目が集まる東大合格者数なども、開成は組織立って合格者を確認してメディアへ合格者数をせっせと公表します。
一方、麻布はというと、近年は週刊誌公表になんとか間に合うものの、必ずしも合格者数のフォローアップに開成ほどのマンパワーを割いていないように思います。
両校はまず外見からして大きく異なります。麻布は70年代の学園紛争のもとになったOB出身の理事長による放漫経営が未だに尾を引いており、財政難のために古い校舎がなかなか新装されません。
対して開成は槌音高く新校舎建築の只中にあります。

両者の共通点は教員の給与の高さ

両者の共通点を挙げるとすれば、「教員の給与の高さ」です。
正確なところはわかりませんが、新人教員の給与では麻布はトップクラスだそうです。開成はその昔、日比谷に追いつけ追い抜けという学校改革の際に、給与基準を一挙に上げて以来、おそらく大企業の幹部並みの高水準となっているはずです。つまりそれだけ優秀な教員が採用されているはず、ですね。 開成の場合、教員の年齢層は偏っていないように思いますが、麻布は何年か前に年輩教員が多く退職し、相当若返ったという関係者から話を聞いたことがあります。

武蔵とは少し肌合いが違う

両者とも旧制中学から新制の中学・高校となっており、創立者はいずれも武家の出身者です。麻布は当初東洋英和と兄妹校でキリスト教教育校でした。その点、筆者は良い意味で「隠れキリシタン」と言ったりしますが、やはり校風としてキリスト教が根底にあるような印象をうけます。
よく御三家といって武蔵を加えた言い方をしますが、武蔵は少し肌合いが違います。武蔵は旧制7年制高校で、旧帝大へフリーパスの特権校でした。開成、麻布は旧制中学からで、旧制高校への進学校という肌合いの違いが未だにあるように感じています。