東京大学
基本情報
試験時間:120分/問題数:大問5題
分析担当
渡邉 哲史

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 長文読解 (A)要約文作成
(日本語で70~80字) 
(B)語句整序、文補充箇所選択
論述・
選択
標準
2 英作文
(A)意見文作成60~80語 (B)和文英訳
論述 やや難
3 リスニング 約30分間
(A)(B)(C) 内容一致文選択
選択 標準
4 長文読解
(A)文法・語法 正誤問題 
(B)和訳
選択・
論述
標準
5 長文読解 (A)内容説明
(B)語句整序 (C)内容説明
(D)空所適語選択、
内容一致文選択
選択・
論述
標準

問題分析

    • (A)の文章題材は「高齢者が暮らしやすい都市設計」(約380words)。例年通りの要約問題。各段落の主旨が非常にわかりやすく読みやすい。力量の差が生じるとすれば、段落間のつながりの正確な分析、特に2,3段落間の対比展開の把握。80字におさめるという編集力はいつも通り高いレベルが求められる。
    • (B)の文章題材は「人間の影響下での生態系の変化・生物の進化」(約860words)。語句整序問題が1題加わったが、内容をふまえずとも文法、構造面だけで処理できる容易なもの。文中5つの空所に適する文を7つの選択肢から選ぶ問題が勝負どころ。段落主旨に合うもの、空所周辺の論理マーカー、指示語をもとに判断。
    • (A)は「私たちは言葉を操っているのか。それとも言葉に操られているのか。」がテーマ。60~80語指定のため、文章の論理構造の優劣はそれほど差がつかないだろう。テーマが難しく、書きにくいことで、時間をかけすぎてしまった受験生も多いだろう。例年以上に思考力、発想力が求められる。
    • (B)は日本人著者の書いた難しい日本語文の英訳。「まゆつばもの」など、日本語特有の表現をどうするか、和文和訳力が求められる出題。短い文ではあるものの、その内容、メッセージの正確な把握が必要だ。
  1. 今年は試験後に音声スクリプト(原稿)が公表された。インタビュー形式の文など、近年の入試頻出スタイルでの出題。(A)(B)(C)の3問構成、ともに500wordsを超える文章であり、あらかじめ設問を確認し、メモを取りながらも放送内容に集中できるようにすることが必要。音読習慣、リスニング習慣を確立することに加えて、試験スタイルの反復練習も欠かせない。
    • 長文が題材ではあるが、大問のコンセプトは文構造分析、いわゆる精読力である。(A)は正誤問題。各段落5カ所の下線部より、誤りを含むものをそれぞれ選択。文内容を参考に文法・語法上の誤りを判断していくものである。動詞の使い方、動詞の語法をテーマとする出題が多く、その部分の知識ベースのない受験生は苦戦したであろう。
    • (B)は和訳。3問中1問が構造分析力、2問が文章内容把握力を問うもの。単なる文法上の分析ではなく、正確な内容把握の伴った分析、答案作成が必要であり、表面的な語句ベースでの変換作業では得点にならない出題となっている。
  2. 文章題材は「将来のため娘を送り出す父親、言葉にはしないものの互いに通じている親子の心境」(約900words)。文章のテーマ、主旨がわかれば容易ではあるのだが、物語文であるため、直接的な説明はない。人物の言動、風景描写に込められたメッセージを把握する必要がある。物語文での出題は、いわゆる「国語力」が求められ、差がつきやすい。今年は(A)(C)の説明問題(日本語での記述)、(D)の適語選択の得点が勝敗を分けるポイントになったであろう。

総評

語彙、文法・語法、精読、英作文、リスニング、要約、文章論旨把握のいずれもが求められる例年通りの出題。入試改革を見据えた大きな変化はなかった。表面的な知識のインプットや単語の訳をあてはめていくだけでは通用しない。本質の理解、内容の理解と表現ができるように学力を高める必要がある。何をどのようにどのペースで進めていくべきか、その方法と計画を熟考し、基礎固めの成功につなげよう。