横浜市立大学
基本情報
試験時間:120分/問題数:大問4題
分析担当
波田野 茂男

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 小問集合
(方程式、ベクトル、
場合の数、確率漸化式)
答えのみ記述 標準
2 整数の論証 論述式 標準
3 図形と計量 論述式 標準
4 積分の計算 論述式 標準

問題分析

  1. (1)4次方程式の解を求める問題。相反方程式の解法を知っていれば容易に解けるが、知らなければその場で解法を思いつくのは難しい。
    (2)指定された条件の下で、ベクトルの大きさの最大値を求める問題。類題の経験がないと少し難しく感じたかもしれない。
    (3)格子状の図形における最短経路の総数を数える問題。多くの教科書に載っているお馴染みの問題で問いも単純だが、見慣れない表現の問題文に戸惑った受験生が多かっただろう。
    (4)赤玉と白玉の入った2つの袋の玉を繰り返し入れ替えたときの状態の確率を求める問題。今年度の〔1〕の小問集の中では最も難しい。慣れていないとてこずるが、難関医学部受験生ならばこのタイプの問題には慣れているはずである。
  2. 有理数、無理数に関する論証問題。(1)は指数法則を正しく使えば容易。(2)は教科書に必ず載っている問題。丁寧かつ正確な記述が求められている。(3)は未経験だと難しい問題。(1)の結果を使いたくなるが、多くの問題集にもある 𝑥 = √2 ,𝑦 = log₂9 を答えるのが無難。いずれにせよ、例示した 𝑥,𝑦 が無理数であることは、当然証明しておくこと。
  3. 正5角形に現れる線分比を求め、それをもとに特定の三角比の値を答える問題。問題集等で類題を経験したことのある受験生が多かっただろう。ただし特に(3)(4)に関しては出題者の用意した誘導の流れ(三角形ABCでの余弦定理・正弦定理)を汲んだ解答をすることもできるが、たとえば(5)の答を先に求め、それと3倍角の公式から(3)を導くこともできる。
  4. 置換積分・部分積分を利用して三角関数の定積分を計算する問題。(1)が(3)のための誘導になっていることに気づくかがポイントといえる。「部分積分法を用いて」と問題文に書いてあるので容易である。
    昨年度および一昨年度の問題に酷似しているので、きちんと過去問を研究した受験生にとっては解きやすかっただろう。むしろ「手違いで昨年の問題を配られたのでは?」と思った人もいるかも知れない。

総評

2017年度に数学の問題が他学部と共通になって以来、それまでと比較して穏やかな難易度の出題が続いている。今年度はその中でも最も解きやすかった。受験生のレベルも考えると、ほぼ全問正解が求められる。証明問題のみならず論述の採点によって点差をつけられるから、これで十分選抜はできると大学側は考えているのだろう。特に〔2〕(2)(3)、〔3〕(1)、〔4〕(3)あたりは差がつきやすい。もう一つ今年度での特徴を挙げると、やはり〔4〕が2019年度の〔4〕とあまりにそっくりな点が目につく。また、2018年度の[4]とも共通点が多い。これは「過去問研究くらいしっかりやって入試に臨みなさい」という大学からのメッセージであろうか。
ともあれ、今年度はどこかで見たことのある問題ばかりが出題された。今後もこの傾向が続く保証はないが、教科書の内容から入試標準レベルまでの確かな理解に基づく学習が必須である。あとは誘導の流れを汲み取ることや、高い評価を得られる論述の仕方について、数学においてもある種のコミュニケーション能力が肝要であることを意識するべきである。