東京大学
基本情報
試験時間:理科2科目あわせて150分/問題数:大問3題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 突然変異とがん 用語記述・記号選択・
考察記述・計算
標準
2 菌根菌と植物 理由記述・
記号選択
標準
3 系統と進化 記号選択・語句挿入・
理由記述
標準

問題分析

  1. 突然変異についての考察問題であり、東大では珍しくコドンを読み取る問題も出題されている。問題の流れは非常にオーソドックスであり、解答しやすいものであったと思われる。また、分子標的薬というタイムリーなものを扱っており、その機序を理解していると効果的であった。
  2. 菌根菌と植物の共生関係を扱った問題。実験の結果の考察が最後に出題されており、問題の流れは少し変化したように思われる感じになった。1つの問題で理由記述を2つ書かせる問題など記述が多く、解答に時間がかかることがポイントになった。問題自体は標準的で知識は教科書レベル。
  3. 進化と系統についての考察問題。この分野は当然過去にさかのぼっての「観察」は不可能であるだけに、専門的な考察の手順通りに考察を進めることが大事である。考察の足掛かりとなる知識は非常に平易であった。

総評

第1問が動物、第2問が植物、第3問が生態と進化という形式は変わらず、記述も「〇行程度」という形式で出題されることも変化していない。考察問題が中心であるのは例年通りであるが、知識で答えるものも増えており、全体的には少し平易になった印象を受ける。問題文も、昨年は24ページに及んでいたものが今年は23ページと減少したことでも進めやすい問題であったことがわかる。記述は2~3行で構成されており、5行などのボリュームのある問題はなくなったが第2問で1つの問題で3行程度を2つ書かせる問題が出題されており、記述量そのものは増えた。
昨年から上位国公立の問題を扱った問題集が増えてきた。古いものでは「標準問題精講」(旺文社)、「思考力問題精講」(旺文社)などがあるが「理系上級問題集」(駿台文庫)、「実戦生物実験考察問題集」(数研出版)なども出版された。対象にしている大学が限られているため重複も多いが、網羅的に進める際に量的には十分なものになっている。
高校1年・2年時であるならば推薦入試も視野に入れた「生物学オリンピック」への参加なども見越した専門的な学習も効果的であり、岩波新書やブルーバックスなどの新書レベルの知識には早くから触れておきたい。生物学オリンピックの問題は、計算や考察のよい訓練になるので、標準的な問題集を終えた後に挑戦することも面白い。
日本の最高レベルの学校を受験する受験生たちによる争いに参加するわけであるから、「得意」と周りからみられていることが標準である。さらにレベルを上げていって、「他に並ぶ者がいない」状況までもっていくことが求められる。とにかく「すでにある問題」はすべて解きつくして、新たに幅広い知識とその考察を新書や専門書で行える意欲と時間的・精神的な余裕をつくっていくことが必要である。